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内定者の就活日記

Diary04

わくわくする方へ

四年制大学大学院 修了見込み/食機能保全科学専攻

2023年3月13日(月) エントリーシート提出

 自分の強みはよく分かっているつもりでした。理系であること、語学が好きなこと、ダンスを10年続けていること、フットワークが軽いこと、読書が好きなこと。でも、エントリーシートを前にすると、そのどれもが弱くて、中途半端な気がしてしまいました。不安な気持ちから逃げた先は、やはり本でした。これも就職活動の一環だからと言い訳し、図書館に通い詰めていたある日、「かみはこんなにくちゃくちゃだけど/いつかかしゅになりたいの」という一文が目に留まりました。そうだよね、今がどんなに未熟でも夢くらいもってもいいし、それに向けてがんばってもいいよね。そう思って、丁寧に素直にもう一度エントリーシートに向き合い、等身大の自分をさらけ出しました。

2023年3月25日(土) 筆記試験

 緊張よりわくわくする気持ちが勝っていました。初めて受ける出版社の筆記試験、楽しみで仕方がありませんでした。ネットニュースをこまめに確認したり、ここ数年の文学賞受賞作品を調べたりしていましたが、意外にも日常で何気なく目にして覚えていたことの方が役に立った気がします。理科、算数、英語、芸術、漫画、文芸、K-POP、スポーツなど幅広い知識を問う問題に一喜一憂しながら、試験終了ぎりぎりまで解いていました。服装に指定はありませんでしたが、私は筆記試験から最終面接まですべてスーツで参加しました。心配性なので、余計なことを考えたくなかったからです。また、試験と直接は関係ありませんが、試験開始前の女子トイレは信じられないほど並んでいました。余裕をもって行ったつもりでしたが、席に戻ったときには既に試験問題が配られており、少し焦ったのを覚えています。

2023年4月21日(金) 一次面接

 私が就職活動中に受けた全面接の中で、一番スピード感があり、一番怖かったのがこの面接でした。海外に親戚がいるという話から発展して「その国のコンテンツで、日本に持ち込んだら流行りそうなものはあるか」と聞かれました。頭をフル回転させて出した答えは、幼少期に見たアニメでした。正直、絶対に流行るという自信はありませんでしたし、映像を言葉で説明するのは至難の業でしたが、『アンパンマン』と『ちいかわ』を足して2で割ったようなアニメで、大好きだったことを満面の笑みで伝えたところ、それまで厳しかった面接官の方の表情が和らぎ、この面接はうまくいったんじゃないかと思いました。しかし、自分の中ではこの回答に納得がいっておらず、もっといいコンテンツがあるのではないか、もっとうまく説明できたのではないか、帰り道ずっと考えていました。

2023年4月26日(水) 二次面接

 二次面接は、和やかではありましたがなかなか手応えを感じることができませんでした。面接官の方が非常に落ち着いており、何を考えているのか、私の回答が響いているのか全く分かりませんでした。しかし、最後の最後で「親戚がいる国のコンテンツで、日本に持ち込んだら流行りそうなものはあるか」と、一次面接と全く同じ質問をされたのです。一次面接終了直後から、考えていたことを自信満々に答えたところ、面接官の方はその日一番の笑顔を見せてくださり、詳細にメモされていました。そして、私は心の中で大きな大きなガッツポーズをしました。

2023年5月10日(水) 三次面接

 選考を通して研究内容を詳しく聞かれることは、ありませんでした。しかし、専門的な勉強をしているのに、それを活かした職業ではなくなぜ出版社なのか、また出版社で活かすとしたら何ができるか、については何度も何度も聞かれました。そして、一番深掘りされたのが、この三次面接でした。高校時代にさかのぼり、食品の勉強をしたいと思ったきっかけ、実際に勉強してみてはじめて見えた、思っていたのと違う現状、自分がやりたかったことはどうすれば実現できるのか。そんなとき目の当たりにした文章の力。まっすぐ一生懸命、話す私を見つめる面接官の方々の目は、とても温かいものでした。もう一つ印象的だったのは、ある評論家の印象について聞かれたことです。もちろん、話の流れがあっての質問でしたが、想定外だったので、率直に「プライドが高そうだと思いました。」と答えたところ、大爆笑がおこり、案外間違っていないのかもしれないと悟りました。その後、その評論家の方の著書をいくつか紹介していただいたので、面接が終わるとその足で図書館に行きました。

2023年5月15日(月) 最終面接

 社屋の前についたとき、触れなくても分かるくらい心臓がどきどきしていました。一丁前に緊張している自分に笑えてきて、大丈夫だよと言い聞かせました。最終面接では印象的な質問がいくつもありました。対立をあおるような文章が書かれることもあるけど、それについてどう思うか、東谷義和(ガーシー)氏が議員に当選するというようなことは、なぜ起こったと思うか、上京してきて一番良かったことはなにか、あなたのオールタイムベストワンを教えて。そして、あの評論家(三次面接で聞かれたのと同一)の印象は。本当に驚きましたが、これに対する答えはしっかり用意していました。「はじめはプライドが高そうだと思っていました。しかし、三次面接で紹介していただいた本を読んで印象が少し変わりました。」
 最寄り駅についてベンチに座った瞬間、涙が止まらなくなりました。自分が思っていたより、私は新潮社ではたらきたいんだな、なんて考えながらいただいた結果は内々定。理系一家に生まれ、何も疑わずにここまで来た私ですが、自分自身と向き合い大きな選択をしたことが少しだけ誇らしく思えました。

① 夜な夜な、友達と人生相談しあったベンチ
② 就活中、踊っていた曲。歌詞に何度も救われました。
③ 就活中踊っていた曲の衣装。踊っているときは、振り付けで頭がいっぱいになり就活のことを忘れられるので、良いストレス発散になっていました。

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