営業部・製作 社員インタビュー
S・Yさん

2022年入社。
2022年より営業部・製作。

仕事の紹介


製本所さんと。希望の仕様が実現可能か入念に相談します。

 はじめまして。製作、という部門に聞きなじみのあるかたは少ないと思います。
 ざっくりいうと、社内外と連携しながら書籍が無事に刊行できるようサポートすることが仕事です。
 いわゆる生産管理の部署……と書くとあまり面白くなさそうな印象を受けるかもしれません。
 実際、業務中に各書の内容を意識することはあまりありません(そんな!)。
 かわりに書籍の外側、いわゆる造本の部分が職務上の専門領域にあたります。
 印刷本は大量生産される商品でありながら、工芸品に近いものであるともいえます。
 その違いは文庫や単行本によってさまざまですが、紙の書籍は基本的にすべてがオーダーメイドです。
 書店や図書館に並んだ書籍をながめてみると、それぞれに細かな違いがあることに気づけるのではないでしょうか。
 実は重版するたびにまったくおなじ本ができあがるわけでもありません。以前使っていた用紙が廃品になっていたり、巻かれる帯を新しいものに変えてみたり……。
 版を重ねるということがこれほど難しいのだと、入社してはじめて思い知りました。
 でも読者からすればその内容を読みたいわけですから、こうした部分は些細なことなのかもしれません。
 よく電子書籍と比較されますが、重くてかさばるうえ、エコフレンドリーでもない……。
 紙書籍は嗜好品に近いという指摘はとても的を射たもののように感じられます。
 ところで出版社は、書籍の刊行という行為によって文化の守り人としての役割を果たしてきました。
 まだ紙の書籍の需要そのものは存在していますが、その生産技術はすでにすこしずつ失われはじめています。
 では文化を記した媒体そのものの歴史が忘れ去られてしまわないよう、誰が記録していけばよいのでしょう?
 版元が紙の本をつくり続けるという意味、あるいはこれから製作が担うべき役割とは、そうしたところにあると思っています。

入社後一番の思い出

 小社刊『成瀬は天下を取りにいく』が2024年度の本屋大賞を受賞しました。
 本屋大賞は版元はもちろん、作家さんのキャリアにとって大事なお祝いごとです。受賞の暁には十数万部の大重版……その晴れ舞台を台無しにするわけにはいきません。
 小社刊行物の前回受賞は10年前。社内に記録はほとんど残っておらず、日程や資材の調整はほぼ手さぐりでした。結果的に重版作業は(ちょっとしたトラブルはありつつ)無事終わり、受賞作発表当日の中継には「本屋大賞受賞!」という帯の巻かれた本が映っていました。後日著者の先生が来社された際、笑顔を拝見することができてほっとしたのを憶えています。
 とはいえ、厳しいスケジュールのなか重版の実作業を間にあわせることができたのは、装幀担当に印刷所製本所、用紙代理店や製紙メーカーさんのお力添えあってのことです。裏方の仕事において、誰にも気づかれないことこそうまくやった証拠だな……と内心強がっていたのですが、ある日廊下ですれ違った編集部のかたから「がんばったね!」とひとこと。嬉しかったです。

ある日のスケジュール

8:30
起床。ギリギリまで寝ていたいので物件は近所のものを探しました。
9:30
出社。通勤ラッシュ時の喧騒を横目に徒歩で会社へ。
10:00
午前はルーティンワークが多めです。目をさますぞー。
12:00
食堂で他部署の人と雑談しながら昼食。
15:00
来客対応。紙についての話はとても勉強になりますしおもしろいです。
17:00
装幀部の社員と新刊の資材について相談しつつ雑談。
18:00
退勤。この日は渋谷WWWへ。いまだに都会はアウェーで慣れません。
22:00
帰宅。昼食が大盛りなので夕食はいつも控えめ。
22:30
アニメを観たり、ノベルゲームをやったり。意外と本は読まないほうです……
24:00
就寝。おやすみなさい。

Off-Time

 週末は寝てたいな~と思いつつ、気づけば足は展示やライブ会場へ……。東京は誘惑が多くて恐ろしい街です。
 こうした休日をくりかえすうちに、意外なところにあるつながりに気づくということが増えてきました。
 知らないところでカルチャーシーンはつくられているのだ、と己の浅さに恥じいるばかり。シティボーイへの道のりは遠く険しい……。


最近、週末はしゃいだ筋肉痛が遅れてやってきます。老化かな。

わたしの「人生の一冊」(新潮社刊)


『文字渦』(円城塔)

 円城塔さんの『文字渦』。
 文芸ってここまで自由にやっていいんだ……!と驚かされつつ、要所要所のリアリティがしっかり担保されているところに感銘を受けました。
 入社後、校閲に関する記事を見かけて「ご苦労さまです」と思ったのはまたべつの話。

就職活動中の皆さんへ

 就職活動おつかれさまです。しんどいですよね。ちょっと無責任かもしれませんが、無理をしてまでがんばらないでください。
 就活中、働きたいわけでもないのになにやってるんだろう、と思っていました。それでも試験対策をして、いろいろな企業の選考にエントリーして、面接で噓をついたりしました。
 いまはめぐりあわせの結果として出版社で働いていますが、べつに読書家なわけではありません。学生生活で打ちこんだこともなかったので、じっと空白の自己PR欄とにらみあっていたのを記憶しています。そのせいか、いまだに作家さんやデザイナーさんに対しては「うらやましいな」という感情を抱いてしまいます。じぶんの表現したいことで生活しているひとたちの輝きは、わたしからすれば眩しすぎるくらいです。
 もしまだ進路に悩んでいるようなら、いちど「やりたいこと」について問いなおしてみてください。就職活動がこれからの人生すべてを決めるわけではありません。働くことすら正解とは限らないでしょう。わたしはここまで逃げてばかりの人生でしたし、世間の規定したレールからはみだすことが悪いとも思えません。
 ただ、みなさんの選択がどういったものであっても、そのゆくすえが祝福されたものであることを願っています。

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