海外出版室 社員インタビュー
Y・Mさん

1999年入社。
週刊新潮編集部、芸術新潮編集部、営業部、広報宣伝部、マーケティング営業本部、プロモーション部を経て、2023年より海外出版室。

仕事の紹介


翻訳作品の現物を確認(壁には海外向け資料がずらり)。

 最初の配属先の週刊新潮編集部で、記者として毎週いろんな人に取材するなかで多くのことを学びました。情報の集め方、取材したい相手を口説くこと、話の引き出し方、原稿の書き方等々、その時に身につけたことがその後の全ての仕事に役立っています。
 次に配属された芸術新潮編集部で、既に世界的な名声を得ている作品から新人の作品まで評価するうえでの指針・基準の持ち方を当時の編集長から教わったことは貴重な経験でした。仕事で文芸作品に向き合ううえでの土台にもなっています。
 その後の営業部では、商品となった本がどのように書店さんに届き一人一人の読者の手に渡るのかを知ると同時に、その膨大な奇跡の積み重ねであるデータを分析する技術を身につけました。これは今も大きな武器です。
 プロモーション部では担当となった本の読者層に合わせてメディア露出の陣形を考えて具現化する役割でした。ターゲットに届けるため、どういうふうに効果的に攻めるか。これがまた今の部署でも役立っています。ちなみにここで出会った翻訳者のジェイ・ルービンさんがキッカケで海外出版の仕事に興味を持ち、現在の部署に異動しました。
 現在いる海外出版室では、これまでの業務経験の全部と学生時代に学んだ語学が活かせていて、まるで「実は新潮社は〇ヵ年計画で人材を養成して配属した」かのような展開です。ここでわたしは欧米を担当していますが、日本の才能を世界に紹介しまくるという目標を掲げています。言語の壁、異文化の壁は想像していた以上に高く、時間もかかりますが、とてもやり甲斐のある仕事です。そして紹介が実り、契約を結ぶことになったあとの過程は過去の部署での経験とは全く別な異世界で、これに関しては日々ほかの人たちの扱う契約の管理進行を見ながら教わる毎日です。目につきやすい対外的な活動以外の、こうした足元部分がビジネスとして重要な根幹になることは営業部で実感したので、体幹トレーニングのように取り組んでいます。

入社後一番の思い出

 新部署でも既に、今後ずっと忘れないであろう体験をしました。九段理江さんの『東京都同情塔』を自分で紹介して、ワールド・ライツ(日本語以外の全言語の権利)のオファーをもらったことです。「皆さんに知ってほしい才能がここにいます!!!」という渾身の雄叫びが届いて、この傑作がきちんと評価されたことがとても嬉しかったです。
 去年のフランクフルト・ブックフェアから帰国したあと、新潮編集部をたずねて欧米で日本文学が注目されていることを伝え、注目の作品をリクエストしたところお薦めされたのが『東京都同情塔』でした。一読して素晴らしかったので、紹介のチラシを書きはじめ、興味を持ちそうな海外の編集者たち(まだ知り合い自体が少ない!)に案内メールを書きました。クリスマス休暇明けすぐに熱い返信をくれたV社の編集者Eさんとすごい勢いで話が進む中、芥川賞も受賞、大きなオファーへとたどりつき、今考えても怒涛の日々でした。ちなみに芥川賞選考会の日は、夕方早々に受賞が決定して「受賞が決まって、今から会見です」とだけメールしましたが、向こうは時差で朝イチのところ即お祝いの言葉が届きました。国を越えて編集者と直接に大きな興奮を共有できたのはとても良い思い出です。

ある日のスケジュール

6:00
起床。朝食のあと、猫の額ほどの庭やベランダの植物の手入れ。
7:00
勉強を兼ねてPodcastで英語のニュースを聞きながら家事いろいろ。
10:30
出社。通勤電車内では国内および海外のニュースを読みます。
大きいニュースがあれば会社についてから情報としてメモします。
そのまま関連情報を検索しまくることも。メールを確認・返信。
夜中にオファーが届いていれば、契約処理の担当の人に襷をつなぎ、自分では今やり取りしている案件のケア。
12:00
社員食堂で昼食。
13:00
担当タイトルの英語シノプシスが翻訳者から提出され、内容をチェック。
16:00
海外文芸フェスティバルへの作家招待や、海外メディアからの著者の取材希望など、
いろいろ届いた依頼を担当編集者に確認。
その間にも契約のやり取りが進められる様子をメールでチェック。
ちなみに海外からの連絡は世界中の時差があって割り切るしかないため、逆に自分のペースで仕事しやすいです。
19:00
退社。
21:00
英語の勉強を兼ねて海外の友人とZOOMでおしゃべり。
海外出版室で働きたいな、と思い立ってから週に何回かしています。
日々のニュースや文化の違いについても心置きなく質問できるので、
海外の人がどんな感覚で日本の作品を楽しんでいるかとても参考になります。
真田広之さん主演のドラマ「SHOGUN」が熱い!!ということを最初に教わったのもこうした会話からでした。
24:00
本を読みながら就寝。

Off-Time

 趣味は山ほどあって全然時間が足りませんが、今も続けられているのは料理、語学、カリグラフィ、刺繍、バドミントンなど。植物を育てるのもそのうちの一つです。全部無農薬で育てています。狭い庭をどうにか工夫して新しい品種のバラを迎えられないか模索中です。今はバラが咲いている季節のイギリスに行くために計画を立てています。


多肉は株分けで無限に増え続けるので、会社でお裾分けすることも。

わたしの「人生の一冊」(新潮社刊)


『村上海賊の娘』(和田竜)

 たった一冊選ぶなんて無茶振り過ぎますが、強いて挙げるなら超弩級スケールに大興奮した本作です。発売時は営業部でがんばり、本屋大賞等の受賞後は異動先のプロモーション部で担当、思い出が詰まった作品。新たに現部署でも展開すべく、作戦を練っています。

就職活動中の皆さんへ

 わたしが就職活動をした当時はまだ就職試験の受験資格に今ほど幅がなく、しかも氷河期、というタイミングで、他の就職活動生よりも年上だったわたしには受験できる会社自体が非常に限られていました。ですがそれが逆に良かったように感じています。自分の経歴は、やりたい仕事は、といったことにきちんと向き合って受験できました。100社エントリーするよりも、自分が働こうとしているのがどんな会社なのか調べ、自分はどんな人なのかを掘り下げましょう。そしてそれを伝える方法を考えることに時間をかけたほうが、納得のいく結果を得られると思います。
 「ウケ狙い」という言葉は悪い意味でつかわれることの方が多いような気がしますが、ウケを狙うということは、売り込みポイントを解っている人にしかできないプレゼン技術です。是非、面接官との会話を楽しみながら、あなた自身がどんな人なのかを伝えてください。

出版部

F・Aさん