新潮文庫編集部 社員インタビュー
S・Tさん
2023年入社。
2023年より新潮文庫編集部。
仕事の紹介
資料室にある膨大な過去の作品が助けになってくれます。
新潮文庫編集部は単行本や書き下ろし作品、海外翻訳、アンソロジーなど様々な作品を文庫という形にして世に送り出す仕事です。編集者の作業は原稿の確認、装幀やキャッチコピーのアイデア出し、解説者の相談、その後のプロモーションなど多岐にわたります。そんな文庫編集部の魅力は扱う作品の幅広さにあると思います。
私は配属されてから一年半で、純文学からエンターテイメント、ノンフィクション、エッセイ、詩集や海外文学まで多くの作品を担当してきました。さらに現役作家の方だけでなく安部公房やカフカなど物故作家の担当もしています。各作品によって売り方の方向性も異なり、日々試行錯誤しながら勉強の毎日です。
その中で私が重要だと感じたことは、“いかにその本を知っていただくか”ということです。新潮文庫だけでも月12点程度、他版元さんを合わせると文庫は毎月500点以上刊行されています。その中で新潮文庫の新刊及び、自分の担当した作品を読者の方に知ってもらうには、装幀やコピーなどを魅力的なものにするのはもちろんですが、書店店頭に置いておくだけでは不十分だと考えています。新聞や雑誌での広告に加え、ネット上に画像で読める試し読みを設置したり、動画を作成したりと、SNSでのプロモーションにも力を入れ、少しでも多くの方がその作品に触れる機会が増える工夫をしています。
新たな試みも多いですが、他の方に相談をすればアドバイスをくれますし、意図をしっかりと説明すれば編集部からGOサインが出るので色々なチャレンジが出来ます。今は毎年夏に行っている文庫販売フェア「新潮文庫の100冊」の50周年に向けて、色々とアイデアを練っているところです。
入社後一番の思い出
文庫編集部に配属されてすぐのころ、腰を痛めしばらく座っての仕事が出来なくなりました。そのことを編集部の皆さんにお伝えしたところ、「腰痛って言えばそうだなぁ……」などとガヤガヤ相談しながら一冊の本を渡してくださいました。それは夏樹静子さんの『腰痛放浪記 椅子がこわい』(新潮文庫)でした。三年間地獄のような腰痛に悩まされた著者が、整形外科ではなく心療内科へ行ったことをきっかけに劇的な回復を遂げる感動のノンフィクションです。「腰痛の時はこれを読むに限るよ」とニコニコの皆さん。心配してくださっているはずですが、それでも「腰が痛いときに読む本って何があるっけ?」となる発想と該当する本がすぐに出てくる知識量。その時私は本当に皆さん本が好きで、心身が本で出来ている人ばかりなんだなと実感しました。今ではその一員として楽しく働いています。本が好きでたまらない方、ここはそんな職場です。ある日のスケジュール
- 10:00
- 起床。大体遅くまで本を読んでから寝るため、起床は遅めです。夜型の人間にとっては本当に有難い。
- 11:00
- 出社。行きに本屋に寄ったり、直接作家さんとお会いしたりするため、出社時間はバラバラです。
席に着くと基本的にはメールチェックから始めます。
- 13:00
- 営業、プロモーション、編集部数名ずつで月1の定例会議。文庫は新刊だけでなく既刊もとても重要。
数千点の中から売り伸ばしが出来そうな作品などについて相談します。
- 15:00
- 新刊の装幀に関する打ち合わせ。担当の方から候補をいただいてあれこれ話し合います。
時には社内を回り、部署関係なく色々な方の意見を伺うことも。
- 16:00
- 文庫といえば本文の後に入る解説。依頼していた方より原稿が届いたので早速拝読して、感想をお送りします。
- 18:00
- 新刊のコピーの締め切りが迫ってきました。
どんな言葉が読者の心に残るか、立ったり、歩いたり、他のことをしたりしながらウンウン悩んで考えます。
この日思いついたコピーを次の日見てみたらてんで駄目だったりします。
- 20:00
- 文庫編集部のSNSアカウントで投稿の準備。
膨大な情報で溢れかえる中、どのような情報を発信すれば良いか日々試行錯誤中です。
- 22:00
- 帰宅。ご飯を食べて、お風呂に入ったらあとは自由時間。好きな動画を見たり、読みたい本を読んだりします。
- 27:00
- 就寝。
Off-Time
小学校から高校まではサッカー、大学からは競技フットサルを始め、今でも社会人チームに所属しています。平日夜と土日どちらかの週2で活動。仕事が忙しくても何とか都合をつけて練習に行けるよう頑張っています。色々な職種、幅広い年齢の人が集まって、社会人になってもまだまだ真剣に勝負ができるというのは最高です。
また新潮社のサッカー部にも所属しており、月1の練習試合と、年に一回出版社8社が集まる大会「出版カップ」に出場し、熱い試合を繰り広げています。最近は会社の食堂で食べ過ぎてやや太ったため、必死に体を絞り中です。
まさか社会人になっても続けるほどハマることになるとは……。
わたしの「人生の一冊」(新潮社刊)
『砂の女』(安部公房)
この作品に出会ったのは大学1年生の時でした。有名だからという理由で読み始めたのですが、深夜に一気読みで読み終わった後は放心状態。この時受けた「小説やばいな……」という衝撃は今でも胸に突き刺さっています。
就職活動中の皆さんへ
個人的に就活はかなり運要素が絡んでくると思います。「運も実力のうち」などと言ってくる人は放っておきましょう。その日のコンディション、面接官との相性もありますし、私自身新潮社にはご縁がありましたが、その他の出版社では書類選考で落とされたりもしているので、必ず自分に合った会社があるはずです。
ただその中でも重要だと思ったことは、正直に自分のことを話すということです。焦って変なことを言ったり、魔が差して話を盛ったりした面接はほとんど落ちました。割り切って等身大で向かった面接は手応えがなくとも通過しました。
就活って本当に嫌ですよね。私は何をしていても「就活」が頭の片隅にある状態が凄くストレスでした。そのため「今これをしている時だけなにもかも忘れられる!」みたいな逃げ口があると良さそうです。皆さんの就活、心より応援しています!