社員紹介

ライツビジネス/IP推進部

K・Sさん

2008年入社。
週刊新潮編集部、新潮新書編集部、コミック&プロデュース事業部、
コミックビジネス室を経て、2025年よりIP推進部。

新潮社への入社理由

 面白い世界に触れたい、ワクワクするものを生み出したい、憧れの人に会いたい――そんな「子どものような気持ち」で出版社を志望しました。入社から十数年たった今も、その童心を大切に働き続けており、この選択は間違っていなかったと感じています。

 新潮社には、学生時代にアルバイトをしたことがきっかけで、新卒採用を受けて入社しました。新潮社の人々もまた、子どものような好奇心と情熱を胸に、それぞれの「面白い」を追い求めています。その純粋さと、いじらしいほどのひたむきさが、この会社の面白さだと思います。

仕事の紹介

 私の現在の仕事は、「新潮社の作品を映像化へとつなげること」です。主に新潮社のコミックスやキャラクター小説を、アニメや実写といった映像作品にする役割を担っています。
 近年、コミックスや小説は本という形にとどまらず、映画・ドラマ・商品・ゲームなどへと広がり、物語の世界はあらゆる形へ拡張しています。作家と編集者が生み出した「物語の種」が、何百人もが関わる大きなプロジェクトに育ち、世界中の人々を楽しませる――その取り組みに携われるのは、純粋に感動しますし、価値のある仕事だと感じています。
 そのためにライツ担当者は、さまざまな「橋渡し」を担います。作品を映像業界に紹介して企画のきっかけをつくること。企画が立ち上がれば内容を精査・選定すること。制作が始まれば著者や編集と連携しながら監修をサポートすること。さらに出資や契約といったビジネス面の交渉も担います。近年では、新しいビジネスの枠組を創出する機会を模索することも重要な役割になっています。
 大切にしているのは「人に合わせた仕事」です。著者・編集者・制作者・クリエイターなど、関わる立場や会社は多岐にわたります。それぞれに思惑や立場があり、それを整理し理解することが不可欠です。また、厳格な人、繊細な人、大らかな人、理想の高い人など、各人が多様な個性を持つため、観察とコミュニケーションを重ねてフォローします。その積み重ねによって、スムーズな進行、トラブルの回避、建設的な議論、そして明確な意思決定へとつながると信じています。そうした意味でも、週刊誌の記者や書籍の編集など、さまざまな立場での経験が現在の仕事に活きています。

実写化、アニメ化、商品化など様々展開していきます。

入社後一番の思い出

 週刊誌の記者時代には、怪しげな情報提供者に騙されそうになったり、張り込みで影武者に翻弄されたり、有名人へのインタビューを突然頼まれたりと、ドラマのような経験をしました。振り返れば大変でしたが、その分どんな状況でも面白がる心と、どんな相手とも落ち着いて会話できる力が身につきました。その経験は、多様な人と向き合う現在の仕事においても大きな財産になっています。

「ある日のスケジュール」

9:00
夜の間に届いたメールをまとめて返信します。編集者、制作会社、著者、海外の関係者などやり取りする相手は多様で、朝が早い人もいれば昼から動き出す人もいます。そのため、この時間に返しておき、相手のペースで確認してもらうのが効率的です。
12:00
出社して打ち合わせ。制作会社、テレビ局、映画会社など制作側との打ち合わせが中心です。コロナ禍以降オンラインミーティングも増えましたが、映像業界の人は人と会うのが好きなのか、最近はリアルな打ち合わせも戻ってきました。多少のハレーションを生んでも、明確な確認を積み重ねることが大切です。
17:00
朝に仕込んでいたメールやチャットの返信作業。人それぞれに合わせたコミュニケーションを意識しつつ、念の為の確認を重ね、リスクやトラブルを未然に防ぐよう努めています。
20:00
同業者との会食。情報が命です。最新の潮流やスタジオ事情、トラブル事例を共有し合い、他業種にはわからない珍事や事件簿、愚痴などを打ち明けながら、共に笑い涙します。

Off-Time

 海外サッカー観戦が趣味です。これまで様々なものにハマってきましたが、最終的にサッカーにたどり着きました(マツコ・デラックスさんと同じ道です)。サッカーは人生の縮図であり、人間の根源的喜びや美しさであり、戦略や組織のシミュレーションであり、そして人類社会や文化の結晶でもあります。つまり、あらゆるエンターテインメントはサッカーに通じるのです。

リヴァプール来日試合観戦時の写真(本人撮影)

わたしの「人生の一冊」(新潮社刊)

 大学時代、「形態素解析」という、言語のビッグデータを分析して傾向を探る研究をしていました。その題材に選んだのが「新潮文庫の100冊」のアマゾンレビューです。そこから、読者というものは「著者の技術」「物語の展開」「登場人物への共感」という三つの軸で面白さを感じていると導きました。
 なかでも「著者の技術」が最も高く評価されていたのが、三島由紀夫の『金閣寺』です。ガラス細工のように美しく華麗で繊細な文章こそ、私が三島を愛する理由だと気づかされ、入社後に『三島由紀夫の言葉』を企画する機会にもつながりました。
 つまるところ、出版の仕事とは「なぜ面白いのか」を追求する営みであり、その原点がこの一冊です。

『金閣寺』(三島由紀夫)/『三島由紀夫の言葉 人間の性』(佐藤秀明・編)

就職活動中の皆さんへ

 出版の仕事とは、つまるところ「なぜ面白いのか」を追求する営みです。子どもの頃に夢中で読んだ原体験や、心を揺さぶられ打ちのめされた物語との出会いを、どれだけ大切にしているかが大事だと思います。同時に、自分の価値観だけでなく、読者の評価や社会の変化に真摯に向き合い、今何が求められているのかを問い続ける謙虚な姿勢も求められています。

 そう考えると、出版は一般的なビジネスや経済合理性とは異なる原理で動く世界とも言えます。その幼さ、純粋さ、不器用さ、ひたむきさ、そして時に非合理さこそが、世界に通用する「面白い」を生み出す理由なのかもしれません。そこを心から面白がれる人なら、この仕事にきっと向いていると思います。

img
img
error: Content is protected !!